星野源の髪型を強要されている。
昨年の今時期、私はパーマをかけた。妻の勧めで39歳にして人生初のパーマ。それまで短髪中心だったので、どうなる事かと心配していたが、妻も周囲の反応も上々だった。ワックスを軽くなじませるだけでセットが完了する手軽さも気に入った。気をよくした私は「夏は短髪、冬は少しのばしてパーマというサイクルはいいな。」などと一人ほくそ笑んでいた。
今年も秋口から徐々に髪を伸ばし始め、美容師さんに「あとちょっと長さがあればOKなんで、次回パーマかけましょうね」と言われてその日を楽しみにしていた。
そんな矢先、突然妻から通告された。
「星野源の髪型にしてよ。」
いきなりの無茶振りである。テレビの向こうで踊るガッキーに見とれていた私は完全に不意を突かれた。
確かにこのドラマの星野源は魅力的だ。控えめで品がよく、程よくお洒落。その見た目と役どころが相まって、ちょっとしたかわいらしさを感じさせる。ガッキーを見たくて妻と一緒に視聴していたが、気がついたら男の私でさえキュンキュンしている。星野源の笑顔に胸キュンである。
しかし良く考えて欲しい。あの髪型がそれ単独でそこまで魅力的だと言えるだろうか?
前髪のアシメに個性を感じるものの、あれは星野源が魅力的であり、その魅力的な星野源がしているからこそ認められるヘアスタイルではなかろうか。てかそもそもがイケメン過ぎるだろ、星野源。
つまり私が言いたいのはこうである。
星野源からあの髪型だけを取り出し、同じく前髪がアシンメトリーであるノンスタイルの井上に当てはめた時、「キャー素敵!抱いて!!」となるだろうか?
または星野源の髪型をザ・たっちのかずやに当てはめたとき、たつやよりかずやの方がモテる様になるだろうか?と言うか、誰か違いに気付くだろうか?
と言う事で、私は必死で妻を説得した。
自分がいかに星野源からほど遠い存在であるか。美容室で「星野源みたいにしてください」と言う事がこの時期、どれだけ恥ずかしいか。そして髪を切り終わって鏡を見ると、そこにザ・たっちのかずやが佇んでいる危険性がいかに高いかという事を。
最初は納得いかない様子であった妻も私の真剣な説得に理解を示してくれた。良かった、危機は回避されたのだ。安堵する私に妻が言た。
「わかった、じゃあ松潤にして」